申告していない期間が長くなるほど、税務署に連絡するのも、税理士に相談するのも気が重くなるかもしれません。
無申告は特に税務調査の対象となりやすいです。本来納める税金に加えて、無申告加算税や延滞税がかかれば、最初から適正に申告していた場合より負担が増えます。過去の資料を集め直す手間まで考えると、期限内にきちんと申告していたほうが、よほど得だったことになりがちです。
| 気になること | 押さえておきたいこと |
|---|---|
| 無申告でも税務調査は来る? | 申告書以外の資料情報から把握され、調査の対象になる |
| どのような負担がある? | 本来の税金に、加算税や延滞税が上乗せされることがある |
| 今から申告しても意味がある? | 提出までの経緯によって、加算税の負担が変わる |
無申告でも税務調査は来る
申告書以外の資料情報から把握
税務署が確認できるのは、自分が提出した申告書だけではありません。支払調書などの法定調書、事業者への照会で集めた情報、ほかの税務調査で把握した情報などからも情報を追っています。
例えばあなたの取引相手側には支払いの記録が残っているはずですよね?
国税庁の令和6事務年度の公表資料では、所得税の無申告者に対する実地調査は4,812件でした。
この資料では毎回、無申告者への調査を重視していることが書かれています。
無申告で税務調査を受けた場合の税金とペナルティ
最初から適正に申告したほうが、よほど得
無申告で税務調査を受けた場合、本来の税金を納めるのはもちろん、申告や納付が遅れたことによるペナルティも生じます。
| 税金・ペナルティ | 内容 |
|---|---|
| 本来の税金 | もともと納める必要があった税金 |
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対して課される税金。提出の経緯や納付税額などで割合が変わる |
| 延滞税 | 納付の遅れに対して、原則として日数に応じてかかる税金 |
| 重加算税 | 隠蔽・仮装があるなど、要件を満たす場合に無申告加算税に代えて課される税金 |
たとえば、ある年分について納めるべき所得税等が100万円だったとします。調査により期限後申告をする通常のケースでは、無申告加算税は17万5,000円です。
(50万円までの部分に15%、残りの50万円に20%を掛けて計算します)
| 申告・納付の状況 | 本来の税金 | 無申告加算税 | 合計(延滞税を除く) |
|---|---|---|---|
| 期限内に適正な申告・納付 | 100万円 | 0円 | 100万円 |
| 調査通知前に自主的な期限後申告 | 100万円 | 5万円 | 105万円 |
| 調査による決定を予知した後の期限後申告 | 100万円 | 17万5,000円 | 117万5,000円 |
本来100万円を納めればよかったところに、余分な負担が上乗せされるわけです。複数年分をまとめて申告するなら、各年分の税金が一度に必要になります。
ちなみにこれは所得税だけの話。これに加えて住民税、国保、人によっては事業税や消費税も払うことになるでしょう。
それが5年分ともなれば、1,000万円単位の追徴となるケースも珍しくありません。
お金だけの問題でもありません。何年も前の売上や経費を調べ直し、資料を集め、税務署への説明に時間を使うことになります。税理士に過去の収支整理や調査対応を依頼すれば、その費用も考える必要があります。
これであれば、最初から税理士に依頼し、青色申告で申告しておいたほうがよほど得です。
税理士費用以上の税軽減が得られますし、そもそもきちんとした申告をするため調査対象となりにくいのです。
隠蔽・仮装がある場合の重加算税
売上を隠すために記録を改ざんしたり、架空の経費を作ったりするなど、隠蔽・仮装に基づく無申告で要件を満たす場合には、重加算税の対象となることもあります。重加算税は最も重いペナルティで、35-40%の罰金が課されます。
過去の複数年分が対象になることも
所得税などについて、税務署が税額を決定できる期間は、原則として申告期限から5年です。偽りその他不正の行為によって税を免れた場合などは、7年となることがあります。
調査を待たずに期限後申告をするメリット
無申告から提出するのは期限後申告
もともと申告していなかった年分について、期限を過ぎてから初めて提出するのは「期限後申告」です。
自主的に期限後申告をすると、無申告加算税などのペナルティが軽減されることがあります。
自主的に出したら、ヤブヘビになるのでは?それがきっかけで調査に来るのでは?と思われるかもしれませんが、気にしなくてよいでしょう。
修正申告にしてもそうですが、自主的な申告というのは基本的に税務署は好意的、誠実という解釈をしてくれている印象があります。
提出のタイミングで変わる無申告加算税
提出タイミングとペナルティの関係を整理すると、次のとおりです。
| 期限後申告などのタイミング | 納付税額の50万円までの部分 | 50万円を超え300万円までの部分 | 300万円を超える部分 |
|---|---|---|---|
| 調査通知前で、決定を予知しない自主的な申告 | 5% | 5% | 5% |
| 調査通知後で、決定を予知する前の申告 | 10% | 15% | 25% |
| 調査による決定を予知した後の申告、または税務署による決定 | 15% | 20% | 30% |
ここでいう「決定」は、申告書が出ていない場合に、税務署が税額などを定める処分のこと。
「決定を予知したか」は、調査を受けたことにより、その処分が行われると見込んでいたかどうかということです。
つまり調査の通知が来る前に自主的に申告すれば、5%で済む。
通知後だが調査実施前であれば、10%~25%。
調査により指摘されたら、15~30%
ということです。
税務署から連絡を受けたときの対応
連絡の内容と対象年分を確認
税務署から連絡が来たら、何の税金について、どの年分の確認を求められているのかを確認します。担当部署・担当者、連絡日時、必要な資料、回答や訪問の日程も記録しておきます。
税理士に相談し、収支と税額を整理
複数年分の無申告がある場合や、売上・経費の整理ができていない場合は、税理士への相談を検討してください。
大切なのは、いかにペナルティを少なくできるか、特に重加算税を回避できるかです。
場合によっては調査実施前の自主的な期限後申告を検討することになります。
相談するときは、申告していない年分、仕事の内容、売上のおおよその規模、手元にある資料、税務署からの連絡内容を伝えます。
経験豊富な税理士であれば、あなたの状況を踏まえてベターな落としどころ探してくれるでしょう。
資料や帳簿がない・税金を一度に払えない場合の対処
残っている資料から収支を整理
帳簿を作っていなかった場合は、まず、取引を確認できる資料を集めます。
- 通帳や銀行の入出金明細
- クレジットカードの利用明細
- 請求書、領収書、契約書、メールなどの取引記録
- ネット販売や業務委託のサービスに残っている売上・入金明細
年分ごとに資料を分け、同じ取引を重複して数えないように確認します。
納付が難しい場合は徴収担当へ相談
過去の税金をまとめて払うことになり、一度に納付するのが難しい場合もあります。そのときは、申告の準備と並行して、所轄の税務署の徴収担当へ相談します。
国税には、一定の要件を満たす場合に利用できる「換価の猶予」「納税の猶予」という制度があります。認められれば、原則として1年以内の期間で納付が猶予され、制度や状況に応じて分割納付などをすることになります。
申請期限や必要書類があるため、預金・財産の状況、毎月の収支、納付できる金額を整理し、早めに確認しましょう。
申告していないことと、税金を一度に払えないことは、対応を整理して相談できます。納付の不安を抱えて放置し続けるより、申告と納付の両方について具体的に進めることが大切です。
申告していない年分と手元の資料を整理し、必要な申告を進めましょう。ご自身での対応が難しい場合は、資料が全部そろっていなくても、税理士に相談してみてくださいね。
